禁酒で肝臓の負担を軽減!
アルコールデトックスの効果や断酒を
継続するコツを解説
2024.12.5
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最近飲みすぎてない?
禁酒についての正しい知識を身につけよう!
「最近、倦怠感や疲労感がとれない」「睡眠の質が下がったような気がする」方は、肝臓の疲労が影響している可能性があります。とくに、お酒を飲む習慣がある方は、肝臓の働き過ぎが原因で心と体にさまざまな悪影響を及ぼしているケースが少なくありません。
本記事では、肝臓とアルコールの関係から、アルコールデトックスの効果と持続するコツを詳しく解説し、禁酒が難しい方に向けておすすめのお酒の飲み方を紹介します。禁酒を目指している方や、なかなかお酒がやめられない方、お酒と上手に付き合いたい方はぜひ参考にしてください。
肝臓とは?
肝臓とは、右上腹部の肋骨の下にある、内臓のなかで最も大きな臓器です。重さは成人で1kg以上と、体重の約50分の1に相当します。毎分約1.5Lもの血液を、肝動脈・門脈・肝静脈の3つの血管が運び、生命活動を支えています。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、何らかの異常があっても、自覚症状はほぼ現れません。一方で、再生能力と代償能力に優れていることも特徴です。
はじめに、肝臓の役割、肝臓とアルコールの関係を詳しく紹介します。
肝臓の役割
肝臓の役割は、下記のとおりです。
- 解毒作用
- 栄養素の貯蔵・代謝
- 胆汁の生成・分泌
解毒作用は、肝臓の重要な役割の一つです。お酒のアルコールやたばこに含まれるニコチンなどの有害物質を中和し、無害なものに変えて尿や胆汁中に排出します。
栄養素の貯蔵・分解・合成も肝臓の役割です。胃・腸で吸収したブドウ糖や、運動後に増加する血中の乳酸を、エネルギー源であるグリコーゲンに変えます。また、赤血球の産生に必要な葉酸やビタミンB12を貯めて骨髄に供給したり、止血に必要な凝固因子のフィブリノゲンを合成したりと、血液に関するさまざまな働きも担っています。
そのほか、胆汁を生成・分泌して老廃物やコレステロールを体外に排出させることも、肝臓の役割です。
肝臓とアルコールの関係
アルコールを摂取した場合、胃から20%、小腸から80%が吸収され、その大部分は肝臓で処理されます。※1
体内のアルコールは、肝臓のアルコール脱水素酵素(ADH)により分解されて、最終的に尿・汗・呼気として排出されます。その過程で生じる有害物質が、アセトアルデヒドです。
肝臓には、アセトアルデヒドを解毒する作用がありますが、過度に飲酒をすると十分に分解できません。そのため、顔が赤くなる、頭痛・吐き気などが引き起こされます。
また、肝臓がアセトアルデヒドを分解するとき、脂肪が合成されやすくなるため、肝臓内に中性脂肪が蓄積して脂肪肝や肝硬変などを発症する可能性があります。脂肪肝・肝硬変の慢性肝機能障害は、狭心症や心筋梗塞などの心疾患を合併するケースが多いため、注意が必要です。
禁酒によるアルコールデトックスの効果
「禁酒には、下記のアルコールデトックスの効果が期待できます。
- 肝機能の回復
- ダイエット効果
- 睡眠の質の向上
- 肌の老化予防
- メンタルの安定化
次章では、それぞれのデトックス効果について詳しく解説します。心身の健康のためにも、禁酒を検討しましょう。
肝機能の回復
肝臓にダメージを与えるアルコールを断つことで、肝機能の回復が期待できます。
肝臓が1時間に処理できるアルコール量は、体重1kgあたり0.1gといわれており、日本酒で換算すると約4分の1(45g)です。※1アルコールの摂取量が多いほど、肝臓は常に処理し続けなくてはなりません。
肝臓が疲労状態に陥ると、全身の倦怠感・疲労感、食欲不振などの症状が現れたり、肝がん・肝硬変などの病気を引き起こしたりと、健康被害が生じます。
肝臓を十分に休ませてあげるためには、禁酒が大切です。まずは、1週間に1~2日程度の休肝日からスタートしましょう。※1
ダイエット効果
禁酒は、摂取カロリーや食べ過ぎを抑え、基礎代謝を正常化させるため、ダイエットに効果的です。
お酒には、多いものでご飯1膳分のカロリーが含まれており、食欲を増進させる作用もあります。また、肝臓は、アルコールの分解を優先し、酵素・ビタミン・ミネラルを使用するため、糖質・脂質・たんぱく質の三大栄養素の代謝が低下して太りやすくなります。そのほか、お酒による血糖値の急激な上昇や腸内環境の悪化、血中アルコール濃度の高まりによるむくみなども、太る原因です。
ダイエット中の方はもちろん、太りにくく痩せやすい体質を目指す方は、禁酒を心がけましょう。
睡眠の質の向上
睡眠の質の向上・改善には、禁酒が重要です。
飲酒をすると深い眠りにつけますが、睡眠の後半はレム睡眠が増えて「体は休息しているが脳は起きている状態」になります。レム睡眠が増加すると睡眠の質は低下して、スッキリ目覚めない、昼間に眠気を感じるなどの症状に悩まされます。
また、アルコールによる利尿作用も睡眠障害の原因です。夜間、トイレに起きる頻度が増えることで慢性的な睡眠不足が起こり、次第に体や心の不調として現れます。
睡眠の質は、健康をはじめ、集中力やパフォーマンスにも影響を与えるため、禁酒を実践しましょう。
肌の老化予防
シミ・シワ・たるみ・乾燥などの予防には、肌のターンオーバーを整えることが大切です。
禁酒には、肝臓の機能を改善して、肌のターンオーバーを正常化する効果が期待できます。肝臓がアルコールを分解するためには、ビタミン・ミネラル・亜鉛などの栄養素が多く必要です。そのため、肌が栄養不足に陥り、さまざまな肌トラブルが生じるケースが少なくありません。禁酒により、アルコールの分解に使用していた栄養素が肌のすみずみまで行き届くことで、健康かつ若々しい肌になるでしょう。
加齢による肌の老化現象に悩んでいる方は、1~2週間程度の禁酒がおすすめです。
メンタルの安定化
禁酒をすると睡眠の質が向上し、メラトニンが生成されて精神の安定やリラックス効果がある「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌量が増えます。
一方、アルコールには抑うつやイライラなど、気分の変化を引き起こす作用があります。お酒を飲むとネガティブな発言をする、自己評価が低下するなどの症状はセロトニンの減少によるものです。また、脳の機能が十分に働かなくなることで、家族や友人などに対し攻撃的・衝動的になり、結果、精神的に悪影響を及ぼす可能性もあります。
禁酒でメンタルの安定化を目指し、ストレスフリーな毎日を送りましょう。
禁酒後いつから肝臓が回復する?
禁酒の3日後にはすでに睡眠の質の変化がみられ、2週間程度で倦怠感・疲労感が軽減するといわれています。禁酒を1か月続けることで、血液検査の値が基準値に近づきます。肝臓の機能が改善するため、肝臓脂肪の約15%の減少が可能です。
しかし、完全に肝臓がもとの状態に戻るまでには、さらに数か月かかります。まずは、3日間の禁酒を目標に、1か月・2か月と徐々に期間を延ばしましょう。
禁酒によるアルコールデトックスを
続けるコツ
最後に、禁酒によるアルコールデトックスを継続させるコツを紹介します。ついお酒を飲んでしまい、禁酒がなかなか続かない方、禁酒のモチベーションが上がらない方は、ぜひ参考にしてください。
水・炭酸水を飲む
お酒を飲みたいときは、水や炭酸水で満腹感を満たし、気分を紛らわすことがポイントです。帰宅時や夕食時、入浴後に積極的に摂取しましょう。ビールのような喉越しを好む方には、爽快感が得られる炭酸水がおすすめです。
水や炭酸水には、基礎代謝の向上や老廃物の排出、便秘の改善などの効果があり、より健康的な体づくりをサポートするでしょう。
おいしいノンアルコール飲料を見つける
アルコールデトックスには、ノンアルコール飲料が強い味方です。
ノンアルコール飲料とは、アルコール度数が0.00%の飲料を指し、味や香りがお酒に似ている飲み物です。※2
近年では、コンビニやスーパーなどでさまざまな種類のノンアルコール飲料が販売されており、手ごろな価格で手に入ります。しかし、ノンアルコール飲料には、甘味料や食品添加物などが含まれている場合が多く、飲み過ぎには注意が必要です。
周囲に禁酒を宣言する
自身の力のみで、禁酒を持続させることは非常に困難です。周囲の家族・友人・同僚などに禁酒を宣言して、協力を仰ぎましょう。また、できる限りお酒の席を避けて、断われない誘いには、事前に禁酒している旨を伝えるとよいでしょう。
禁酒が難しい方に
おすすめのお酒の飲み方
無理にお酒を我慢すると、かえってストレスになり、飲酒量や回数が増える可能性があります。また、これまでのライフスタイルを急に変えることも容易ではないため、まずはお酒の飲み方から変えてみましょう。
ここからは、禁酒が難しい方におすすめのお酒の飲み方を紹介します。お酒と上手に付き合いながら、健康的な日常生活を目指しましょう。
適量を心がける
お酒は、適量を心がけることが大切です。厚生労働省は「節度ある適度な飲酒」として、1日あたりの純アルコール摂取量を20g程度に抑えることを推奨しています。
各酒類の純アルコール20gに相当する酒量は、下記のとおりです。
種類 | 量 | 純アルコール量 |
---|---|---|
ビール(5%) | 中瓶(500ml) | 20g |
日本酒(15%) | 1合(180ml) | 22g |
焼酎(20%) | 1合(180ml) | 29g |
チューハイ(7%) | レギュラー缶(350ml) | 20g |
ワイン(12%) | グラス2杯(240ml) | 24g |
ウイスキー(40%) | ダブル水割り(原酒60ml) | 19g |
(※1)
ビール、コップ1杯分を純アルコールに換算すると、約7gです。中瓶またはロング缶(500ml)1本が、純アルコール20gに相当します。日本酒のおちょこ1杯分の純アルコール量は4gで、1合に抑えることが好ましいです。焼酎は、アルコール度数が20%の場合で1合(180ml)、25%では0.6合(110ml)程度に抑えましょう。
少量の飲酒でも顔が赤くなる方や65歳以上の高齢者は、より純アルコール量を減らす必要があります。
休肝日を設ける
休肝日とは、「週に1日以上、お酒を飲まない日を設けて肝臓を休めること」を目的につくられた言葉です。
週3日の休肝日には、飲酒総量の減少はもちろん、お酒で傷ついたDNAや臓器が修復されるメリットもあり、死亡リスクを減らす効果が期待できます。一方、休肝日がない方は、休肝日がある方に比べて死亡率が1.5~1.8倍ほど高いことがわかっています。※3
休肝日は、5日間飲酒したあとに2日連続でつくるよりも、2~3日に1回の頻度で設けることが効果的です。まずは、曜日を決めて週1回の休肝日からはじめてみましょう。
サプリメントを摂取する
巷では、肝臓の機能をサポートしたり、飲酒で不足しがちな栄養を補ったり、お酒を飲む方の健康維持をサポートするサプリメントが複数あります。
とくに、下記の成分が配合されたサプリメントがおすすめです。
- しじみ
- ウコン
- 肝臓エキス
しじみは、肝臓の機能を高めてアセトアルデヒドの分解を助けるオルニチンやタウリン、アラニンが豊富です。また、胃の粘膜を保護するビタミンB2や、コレステロールの上昇を抑えるコハク酸も含まれています。
ウコンに含まれるクルクミンには、肝臓の解毒作用の強化や、胃腸の働きを促進する働きがあるため、二日酔い予防に効果的です。
肝臓エキスとは、豚のレバーの酵素を分解・抽出し、消化吸収をしやすくしたものです。肝臓の再生に必要なアミノ酸をはじめ、健康維持に欠かせないたんぱく質やミネラルなどの良質な有効成分が含まれています。
まとめ
本記事では、肝臓の概要・役割から、禁酒によるアルコールデトックスの効果や禁酒を続けるためのコツ、おすすめのお酒の飲み方までを詳しく解説しました。
肝臓には、有害物質を無害化する解毒作用をはじめ、栄養素を貯蔵・分解・合成する働きや、不要な老廃物・コレステロールを体外に排出する役割があります。そして、肝臓とアルコールは密接に関係しており、過度な飲酒は肝臓機能を低下させ、さまざまな健康被害を引き起こします。そのため、体と心の健康には禁酒が重要です。
水・炭酸水・ノンアルコール飲料などの代替品を上手に活用し、周囲の協力を得ながら禁酒を成功させましょう。
しかし、無理に禁酒をしようとすると、かえって飲酒量や飲む回数が増える恐れがあります。お酒は、適量を心がけて2~3日に1回の休肝日を設定し、サプリメントを活用しながら上手にお酒と付き合いましょう。
亀崎智子(管理栄養士)
大学の管理栄養士養成過程を卒業後、食品製造会社の製造現場や商品企画、某コンビニの新商品開発に携わる。妊娠を機に退職後、「かめごはんの料理教室」を主宰し、主に無添加ふりかけ講座やファスティングの講座を開催し、食べ方と出し方についてお伝えしている。現在は、満月の日に仕込むふりかけと即席スープの素も製造販売。加えて、根本原因にアプローチする揉まない整体をするセラピストとしても活動中。